Keyword シェム・ハ
#09
小日向 未来を依り代に、
膨大なエネルギーと共に再誕したアヌンナキの一柱。
死したる後もその遺骸は、
近づくモノを排撃する防衛機構を備えた施設(通称「棺」)に収められ、
さらに極冠の厚い氷の下に封印されていた。
この事実から、
先史文明期に置いてシェム・ハの復活は
何を以ってしてでも阻止されるべき事態であると推察される。
フルネームは、シェム・ハ・メフォラシュ。
その名には、
後にゴーレムの起動にも用いられる「力ある言葉」の意味が込められており、
シェム・ハを特徴づける「能力そのもの」を指しているとも伝えられる。
#10
シェム・ハの能力は、
自身を示すその名が示しているように「言語」に由来したものとなっている。
それは――言葉によって、構造式を書き換える力。
喩えるならば、
既にあるプログラム(在り方/構造式)に対し、
プログラム言語化した自身の一部を滑り込ませることで全く別の存在に改造する不条理である。
ダイレクトフィードバックから逆流することで、
風鳴本邸地下に設えられた大規模メインフレームに侵入した「プログラム シェム・ハ」は、
瞬時にしてその機能を掌握した他、
浴びた対象を白銀へと書き換えて、
無理矢理に物質転換せしめるといった埒外の脅威を次々に披露するのであった。
#11
地球生物の進化と滅亡に大きく関与しており、
その功績と手腕を評して「改造執刀医」と称される。
一種のプログラム言語と化したシェム・ハは、あらゆるシステム内に侵入。
たとえ、自己を保てない程度のデータであっても、
相互に連携する事ができれば、
そこからの「再生」、「増殖」、果ては「進化」までを可能としている。
すでに生体演算端末群が構成する脳波ネットワークを汚染している現状では、
事実上の完全覆滅不可能であり、
シェム・ハの叛乱とは、分断と封印せざるを得ない惑星級の「特異災害」であった。
#13
シェム・ハ究極の目的は、
ヒトもカミも区別なく、全ての知性体をひとつに統合させる事であり、
すなわち、この宇宙に全能の「唯一神」を誕生させる事である。
それこそが「わかり合えない」という、
知性体だけが持つ「痛み」に抗えるからであった。
ユグドラシルシステムにて地球を遊星神殿へと改造し、
人類をはじめとする生命体を十一系統の怪物へと造り改めた後にシェム・ハは、
まず、この地を去った同胞の銀河に攻め入って塗り潰し、
そこからさらに「神の版図」を広げていく構想であった。
だが、道具と蔑んでいたはずの地球人類は、
超克すべき「痛み」と共に在る未来を選択。シェム・ハに向かって宣言する。
それはシェム・ハ自身がかつて何度も夢に見て、
そのたびに叶わぬ事実に打ちのめされてきた選択でもある。
真っ向否定し、圧し砕くことも容易な、黄色い嘴のさえずり。
なれど、全力と全力の激突の果てに、カミを下した強き存在の言葉であるならば。
か細き可能性ではあるものの、
シェム・ハは、これからの世界をヒトの裁定に託すと決めて消え失せる。
人類こそが「未来」を司る守護者として。
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